息子が誕生してからというもの、嬉しさと感動の連続でした。けれどその中で、思っていた以上に「試練」と感じる瞬間もありました。
それが、入院中の面会時間の制限です。
妻の入院していた病院では、面会は夜10時まで。
その時間を過ぎると、どんなに会いたくても病室には入れません。
後日、先輩パパに「それでも長い方だよ」と教えてもらって少し驚きましたが、当時の私にはその制限が本当に長く感じました。
生まれたばかりの息子は、まだ手も足も顔も全部が小さいのに、ちゃんと全部が機能していて、
あくびも、くしゃみも、母乳を飲む姿も、ひとつひとつが愛おしくてたまりませんでした。
そんな姿を一瞬でも多く見たくて、仕事中は時計とにらめっこ。
夕方になると定時ダッシュを決め、混雑する電車を駆け抜ける日々。
病室の扉を開けて小さな息子の顔を見た瞬間に、すべての疲れが吹き飛ぶようでした。
そんな中、もうひとつ大きな心配ごとがありました。
それは、息子に黄疸の症状が出たことです。
医師から「黄疸は赤ちゃんによくあることですが、血液中のビリルビンという物質が過剰に増えると注意が必要です」と説明を受けました。
身体が全体的に黄色っぽくなるのが特徴で、重い場合には膵臓などに影響が出ることもあるそうです。
幸い、息子の場合はすぐに光線治療(フォトセラピー)が始まりました。
小さな体に目を守るアイマスクをつけ、青白い光を浴びながら眠る姿。
その光景は少し切なくて、でもそれが回復への唯一の手段でもありました。
私たちにできるのは、遠くからその姿を見守ることだけ。
手を伸ばしたくても届かない距離で、ただ祈るように見つめていました。
その間、退院の日も1日延期に。
「無事に治りますように」と心の中で何度も繰り返しました。
わずか1日の延期だったけれど、その時間はとても長く、胸が締めつけられるような感覚でした。
そして翌日の再検査。
医師から「ビリルビンの数値が下がりました」と聞いた瞬間、胸の奥の何かがふっと軽くなりました。
ようやく安心できる時間が戻ってきた気がしました。
退院の日、光線治療を終えて抱き上げた息子の体はあたたかく、少しずつ元気を取り戻しているのがわかりました。
小さな命が頑張っている姿に、改めて「生まれてくる」ということの奇跡を感じました。
出産という大きな山を越えた後にも、こんなにもたくさんの心配や不安がある。
その一つひとつを乗り越えるたびに、家族としての絆が少しずつ強くなっていくのだと感じた入院生活でした。

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